ハーツフィールド 作るんですか?

 もしAKB48みたいにスピーカー総選挙があったら

「1位はハーツフィールドやな。2位はタンノイ オートグラフで決まりやで」

「3位はオリジナルノーチラスじゃないですか」

「いやスワンやで」

「自作はなしです」

 

埼玉のOさんは以前デスクトップのミニゴンのキットを依頼してきた友達でよく工房に遊びにきます。

「次に作るスピーカーはハーツフィールドに決まりやな。さしずめハーツフィールドはスピーカー界の指原莉乃やで。工作人間なら避けて通れんやろ

「・・・・。モノラル時代のスピーカーだから一個作れば絵になりますね。でも、リンのソンデックLP12のミニチュアの準備もしてるしな~」

「インスタ映えを考えたら2個やで。まずデスクトップのステレオで試聴して、写真撮影が終わったら二人で山分けや。本来モノラルで使うのが正解やから。ラジオに最適やで」

「あの~、作るの手伝ってくれるんですよね」

以上のような会話があったのは2018年のお盆休みでした。

音響レンズが難しそうですが、「なんとかなるんちゃう?」とOさんが言うのでデスクトップ用超小型ブックシェルフとして製作することになりました。

タンノイにオートグラフミニというかわいいスピーカーがありますが、あんな感じにもっと小さく作れたらいいな。

資料と作図

ビンテージオーディオに詳しくない僕でもハーツフィールドの名前は知っています。

ハーツフィールドさんとバート・ロカンシーさんで有名なJBLのスピーカーということくらいですけど。

資料はステレオサウンド別冊 大型スピーカーの至宝のみ。

もちろん実物も見たことありません。

記事の中の断面図と写真を測って図面を書きました。

この図面を元に3Dデータを作図します。

音響レンズは作れるのか

まず検討するのは、音響レンズが製作可能かということです。製作できなければハーツフィールドは作れません。

・アルミを曲げてみる

たぶん誰しも考えるアルミ板のプレスで試作してみました。

厚手のアクリルブロックでジグを削り出し、0.2と0.3tのアルミをクランプしてみましたが曲げ戻しがあり、複数枚作るとバラつきます。ジグを修正して削り直しクランプでいくか、あきらめて精密板金屋に頼むかですが見積額は軽くスピーカー買えちゃうくらい高価なのでどうしようかな。

・ABSから削りだす

1ペアしか作らないので精密板金はやめて全部黒いABS樹脂で削ることにしました。モデラーなのでやっぱり自分で作りたいんです。

裏面を削っています。細い板から4枚ずつ。

断面はこんな感じです。なみなみになっています。

ぴったりかみ合うジグを作り、セットして表を削ります。

 

トタン板みたいなレンズができました。

削り上がると厚みは0.4ミリになります。これを18枚削っていきます。

ペアで18枚です。本物より2枚づつ少なくしてます。スケールが小さいですから。これについては後で説明します。

削るのに25時間かかりました。これから一枚づつヤスリをかけて仕上げないといけません。18枚、30時間くらいかかるでしょうね。

ジグに乗せてヤスリがけを少しづつ進めます。薄いパーツなので変形を防ぐためです。

仮組をするとそれっぽくなってきました。

キャビネットの製作

使用したのはウォルナットです。これだけでもかなりの金額です。

図面から作図したソリッドデータの展開図

紫色のパーツが4本のバー。三角のパーツは中の仕切り板。ウォルナットから削り出しています。

青いパーツは、スピーカー端子が付く裏板です。四角いポケットはナットの逃げです。端子のネジ部分が短いので、こうしないとナットで留められないのです。


端子を改造する

ミニスピーカーに普通のスピーカーターミナルは大き過ぎます。秋葉原で小さい端子を買ってきて改造します。

穴が貫通してるのでフェノール基板をカットしてはめこみハンダを流して塞いだらスピーカー端子になります。

バナナプラグも使えます。赤、黒の区別は、後で樹脂でリングを削ってはめこみます。


キャビネットの正面の板(青いパーツ)。ウォルナットから削り出します。

サランネットを取り付けるのでネオジウム磁石を埋め込んでいるところ。これで位置も決まります。

楕円穴はバスレフの出口です。

バスレフポートの製作

アルミパイプを45度で正確にカットしたらヤスリをかけて仕上げます。

バッフル裏にカウンターしてある部分にはめ込み接着します。接着位置を簡単に決めるのと接着剤が見えるのがきらいだからです。 切り口は楕円になりバッフルの開口形状とぴったり合わせます。サランネットで全くみえなくなりますけど。

このように角度がついてキャビネットの中に収まります。

底板は組み立ての時、ビス留めするためM3ナットがはめ込んであります。このように小さなものを作るときナットかインサートを入れて対処することが多いです。ナットは安くて好きです。

底板の下に薄い板がさらにビスで留まります。このように分割するのは、フラットな面のヤスリがけをし易くするためです。

 

材料を節約する工夫など

無垢の木材はとても高価です。僕も自由に調達できるわけじゃないので工夫している部分の説明をします。

自作はコストも重要なテーマですから。

特に薄くて大きい面積の板は入手しづらいので継いで使ったりします。写真の小さい三角のパーツは中の仕切り板で左スミで延長してますし、大きいパーツは厚さ4ミリほどですが、10ミリの厚材から削り出すと無駄が多いので入手しやすい5ミリの板をくの字に接着しています。このパーツはキャビネットの最も下部ですので、接着ラインをエッジに持ってくることで影になる部分でもありほとんどわかりません。作業は、板の状態でくの字にカットした板を接着し、それから板の厚みを出し、形状の加工をするので精度を維持できます。模型的な処理ですがこのような工夫は各所にいろいろしています。

 

フロントのブロックを削り出しました。このパーツは箱組みより一体で作ったほうがきれいにいきます。

軽量化と変形防止の為、裏をポケットしてます。

ナットを使うことが多いですがここではM3のインサートをボール盤を使って圧入します。

ボール盤は回転させません。押し込むためだけに使います。

キャビネットのサイド板。2本のミゾは仕切り板の位置決めです。

天板を加工してます。

底板をビス留めするためのキャビネット側の枠。M3ナットを仕込んであります。

細かいパーツも削ってあります。内側に接着するパーツ。赤黒リングはスピーカーターミナルにはめるプラスマイナスの表示です。

 

 

 

 

 

以下続く

製作過程は一週間に数回更新していくつもりです。はたして完成するのでしょうか?

完成予定は2018年の10~11月です。