コトブキ飛行隊の樽ジョッキを作る
「モデルグラフィックスの隼キットを作っているんですよ、ファインモールドの」
タミヤ好きのプロモデラーK君が久しぶりに工房に遊びに来ました。
「こういうのは話題になってる時(2019年3月)に作りたいんですよね、何か作らないんですか?」
「じゃあ、僕も作ろうかな、キットは持ってるし。」
「プラモはこっちにまかせて、樽のジョッキ作れませんか?劇中でみんなが飲んでるやつが欲しいなあ」
「樽は作ったことないし、木を曲げても精度出せないしなあ。旋盤屋に一体で削ってもらって放射状にスジ彫りいれて作ろうか」
「だめだめ、工作人間なんだから全部自分で作ってくださいよ。それに一体で削ったら木目がいっしょで樽っぽくならないです。そこはちゃんと再現してくださいね、楽しみだなー」そう言ってK君は神奈川に帰っていきました。
「荒野のコトブキ飛行隊」の樽ジョッキを再現するべく何度も図面を書き直し3次元CADで立体に作図します。そして全て削って製作できるようにパーツ構成とクリアランスを考えて上図のようにパーツ分割しました。
まず列ごとに同じ木材(ウォルナット)で台形の棒を削り出します。アルファベットごとに木目がそろっているわけです。これをぐるっと筒状に接着します。
上下のリングと真ん中の大きいリングを接着しました。この状態から削り込んで意図した形状に加工していきます。
NCでパーツを削りだしたところ。小さな穴は接着用ダボ穴です。アルファベットの列を合わせてエポキシで接着すると垂直方向の木目がそろいます。ヤスリで研ぎながらウレタン塗装して#3000まで仕上げると光沢が出てきます。
本体が転がらないようにジグをはめます。次に本体表面にぴったり沿うジグをアクリルブロックから削りだし、両面テープで貼って、接着ラインの上からタミヤのエッチングソーでスジ彫りを追加していきます。そしてラッカーの黒を流して溝を強調しました。
ABSブロックから取っ手を分割して削りました。樽の内側からビス留めするので取っ手の強度は抜群です。取っ手はエッジにRを付けます。リングにつながる部分は可変Rで処理します。サフ吹きして仮組みし、塗装クリアランスを確認します。
Mr.カラーのブラウンとブラックの混色でこげ茶色を作ってエアブラシで吹き付けます。セミグロスクリアーでコーティングしたらエッジをタミヤのウエザリングマスターでわずかに金属感を演出します。
取っ手の一部は分割され段落ちで組み合います。すこし広げてジョッキにぴったりはまるわけです。底板の大きいパーツはジョッキ本体に接着。小さい板は磁石で着脱可能にして取っ手のビス留めができる工夫をしてあります。
完成したのでK君がやって来ました。
「樽ジョッキは出来たけど、K君の隼、写真撮影に間に合わなかったじゃん」
「まあ、いいじゃないですか。次の作品でいっしょに撮りましょう」
「次?次があるの。じゃあ久しぶりにプラモ勝負で」
「だめ、だめ。戦闘機にならべて写真映えするのはやっぱりパイロットゴーグルでしょ。ザラかケイトのゴーグルが欲しいな」
「・・・」
「面倒だから3Dプリンター使おうと思ってるでしょ。自分で削ってくださいね。ミニチュアじゃなくて実寸で完璧に再現してくださいよ。レンズも削って。楽しみだな~」
そう言うとK君は神奈川に帰って行きました。