普通のターンテーブルも作ってみた

僕はたくさんのオーディオ機器を持っていませんが、レコードプレーヤーだけは2台ならべて使いたいと思っていました。できれば自作で。MMとMCカートリッジをそれぞれ取り付けてひとつのアンプで使い分けたいんです。交換しなくていいし楽ですから。

円形ターンテーブルがとても手間がかかってしまったので、もうちょっと楽な作業で普通のプレーヤーを作ることにしました。

DJ用の補修パーツとして販売されていた部品を使って作業時間を短縮したいと思います。(このプレーヤーも数年前の製作なので、現在補修パーツは簡単には手に入らなくなってしまいました。手に入るパーツもあります。)

トーンアームはジェルコの市販品を使うことにしました。

テクニクスのダストケースとヒンジとゴムフットを新品で購入しました。ダストケースはアクリルの削り出しと接着で作ろうと思っていたのでだいぶ手間が省けましたが、ヒンジ取り付けパーツは考えなければなりません。開閉にかなりの力がかかる部分なのでキャビネットのパーツ分割に関わるところです。

昔のプレーヤーのように木で枠を組むと突き板も貼らなくていいので作業は早いですが、自作パーツであるシャフトとアームを一体化したアルミブロックを取り付けた場合、表面のパーツ構成が難しくなります。何度も違うパターンで作図してやはり積層と突き板貼りでいくことにしました。

キャビネットを作る

MDFをマシンカットします。天板だけは先にウォルナットの突き板を接着してからカットしています。

ビス部分はナット形状に掘り込んでステンレスナットを埋め込みます。木ネジはいっさい使いません。

インサートでもいいんですけどナットの方が好きなんです。安いし。鬼目ナットはサイズが大きいので僕は使いません。

写真取り忘れてますが、クランプして積層して接着してます。詳しくは円形プレーヤーを見てください。

突き板を貼る前にサイドを仕上げます。厚いアクリルブロックにペーパーヤスリを貼りフラットを出します。

端子板やヒンジの受けを取り付ける背面はこのように分割、接着されています。RCAジャックや電源ジャック用の穴が開いていてナットもすでに仕込まれています。

強度は十分に取れ、安心してヒンジの力をかけられます。接着はエポキシです。木工用ボンドは使いません。

こんな風に積層したものと箱状のキャビネットを思い浮かべていただけると強度の違いがはっきりイメージできると思います。

突き板をサイドに貼ります。天板とのあいだに絶対に隙間ができないように貼ります。

木目はキャビネットをぐるっと一周するように長手の突き板から取ります。必ず一面づつ作業し、木目がずれないように貼りましょう。突き板はとても高価ですから。そしてカンナをかけます。この作業が一番楽しくて好きなんです。

たまには工具の説明を。普通の木工のかんなも使いますが、突き板のときは好みで西洋かんなを使います。

右のブロックプレーンかんなは左のかんなの20倍以上の価格です。でも作りはいいし、コレクションする楽しみもあります。

スピーカー工作にもかんなは必須です。ひとつ持ってるといいです。あと、よく使うのはノミですね。刃先はいつも研いでおいて切れる状態にしておくのが一番のポイントです。切れない刃物でいい仕上がりは望めません。たぶん。

でも、写真左のかんなは、400円くらいで安いですがいいものです。これはおすすめできます。

裏側もかんなで削りペーパーで仕上げます。表よりだいぶ気が楽です。裏面もすべてオイルフィニッシュしておきます。

 

エッジは全周0.8Rつけています。

3000番までペーパーをかけながらオイルフィニッシュで仕上げればとても美しい表面になります。

モーターと電源を組み込むとこうなります。

 

アルミパーツの製作

トーンアームとセンタースピンドルを連結するアルミ板を削ってクリアランスとビス留めの確認をしているところです。

アーム下のアルミパーツを仕上げた後、サンドブラストを打ったところ。

このときはゴールドムンドのカタログを見ながらブラストの番手を決めたのです。

このあとアルマイト処理をしています。

モーター取り付け部もアルミで製作。やはり見た目は重要なのです。内部に制動用のゴムがありモーターの振動は伝わりづらくなっています。宙ぶらりんのような状態です。詳しくは円形ターンテーブルをご覧ください。

 

ちょっと詳しく説明します。アルミベースはシャフト部とアーム取り付け部に5ミリのアルミを重ねてビス留めする構造にして強度を得ています。キャビネットに埋まり込んでビス留めされるので十分な強度です。モーターや33と45回転切り替えスイッチもあります。

円形プレーヤーはこのようにアーム取り付け部が宙に浮いているから10ミリのアルミで強度を得る必要があったのです。

今回はいかに手間を省くかも重要なテーマですから。

RCAジャックとグランド端子用の板は黒アクリルとアルミで削って磨き出し。電源ジャック用板はパーツがぴったりはまり込み、ビス留めできるように。

RCAジャックのほうが便利で好きです。

ヒンジ受けのパーツは黒いABS樹脂から削り出し、黒で軽く塗装してセミグロスのクリヤーでコートしました。

ヒンジはクリアランスを考えてありますので、がたつきなくぴったりはまります。ここにがたがでないように設計しておくのが一番のポイントです。

アルミ板が段落ちでABSパーツとビスで共締めされきわめて頑丈です。ヒンジがキャビネットの突き板を傷つけるのを防ぐためです。せっかくていねいに製作したパーツが傷ついたりするのは我慢できないのです。

 

キャビネットの底面は2ミリの大きなアルミ板が取り付けられています。

3ミリのアルミで製作し、アルマイト処理したパーツをプラッターの天面にビス留めしたのが左。 右がノーマルのプラッター。

ノーマルのプラッターを指ではじくと響きがずっと残ります。左の複合プラッターは響きはまったく残りません。とはいっても、マットを乗せるのでほとんど問題にはならないと思いますし、僕は気にしていません。気にしているのはパーツの外観と仕上がりです。

マットをめくるとちょっとうれしい気分。キャメルのマットは無難な感じですけど、まあいいですね。

製作期間は6ヶ月、130時間くらいです。

僕が参加しているオーディオの会にこのプレーヤーと円形プレーヤーを持っていって2回ほど有名な市販品と聞き比べをしましたが、聞きおとりすることはまったくありませんでした。

今回の製作での感想は

①市販アームはやっぱり便利、作業がだいぶ短縮できました。

②一万円のオートプレーヤーは自作用にとても使いやすい。ほんとにありがたい製品です。

③モーターの微調整はヴォリュームを使って次回は簡単にできるようにする。

2つのターンテーブルを製作して数年たちますが、最近、一度モーターの微調整をしただけでトラブルはありません。

センタースピンドルもまだなんともなく、結局自作で強化スピンドルを作ることはしませんでした。

この四角いターンテーブルのように作るとしたら、MDFとアルミはレーザーカットを依頼してパーツをそろえるのが安く上がり自作向きと思います。ヒンジ受けパーツ一式の削り出しを業者に頼むと、一品物ですから驚くほど高価です。安いターンテーブル買えちゃいます。ですからダストケースをなしにすればこのようなプレーヤーを製作するのはそれほど難しくはありません。

最後にスピーカーやターンテーブルなどを作るとき僕が最も注意していることを書きます。

長期に渡る製作であってはならないのは、落とす、ぶつける、怪我をするです。特に突き板を仕上げた後の傷は取り返しがつきません。作業を終えるたびに梱包材にくるんで保管する。作業台には必ずきれいなマットをしく。眠いときは作業しない。

など、ばからしいほど単純な工夫ですが2台とも無傷で完成させています。自作に失敗はつき物かもしれませんが、その多くは事前の対処でなくせるものばかりです。

ターンテーブルの製作を読んだ数人の友達から、自分で作ってみたいからもっと簡単にならないかと言われました。

突き板とか貼らなくていいやつ、簡単キャビネットを次回は作ることになりそうです。